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Successful Case食中毒菌迅速多重検出システムの実用化

企業名
プリマハム株式会社、タカラバイオ株式会社
所在地
(プリマハム株式会社)東京都品川区東品川4丁目12番2号 品川シーサイドウエストタワー
(タカラバイオ株式会社)滋賀県草津市野路東七丁目4番38号
企業紹介文
・プリマハム株式会社は、食肉食品製造業、ハム・ソーセージメーカーで大手4社の一角を占めており、現在業界3位の会社です。
・タカラバイオ株式会社は、バイオテクノロジー関連の研究開発型の企業で、バイオ研究用試薬の製造販売、研究受託サービス、健康食品等の製造販売を行っています。
研究タイトル
食中毒菌迅速多重検出システムの実用化
研究期間
2001年~現在進行中
研究者名
農研機構 食品研究部門 食品安全研究領域 食品衛生ユニット 川崎 晋

Background研究にいたったきっかけ

食中毒菌の遺伝子検査キットは既製品がありましたが、食品への活用には、前培養や核酸抽出過程等の至適化に検討を要するなどの問題があり、普及を妨げている現状がありました。当初の時点で食品からの検出のニーズがあることは理解しており、企業や衛生研究所でのインタビューからも明らかでした。さらに、遺伝子検査による検出系は高コストという点もあり、これも普及を妨げる原因となっていました。しかし、原因となる食中毒菌を複数同時に検出できれば結果としてコストダウンにつながることになります。今後、遺伝子検査自体のコストも基本原理(PCRによる遺伝子増幅)の特許が順次切れていくことから、長期的にコストダウンとなっていき、より技術の普及が容易となる未来があることも本研究テーマを設計した際にイメージしたことです。

Contents研究の内容

本研究では、食品製造現場での多種多様な衛生管理業務に対応できる自主衛生検査の開発・普及を目指して、複数食中毒菌を一括して同時に検出可能とする技術開発を行いました。具体的には、死亡に至る重大な感染型の食中毒事故が報告されている腸管出血性大腸菌O157・サルモネラ・リステリアの一括同時迅速検査法を開発・特許化しました。開発手法では検体25g中にわずか1細胞の標的菌が生存すれば当日での検出が可能で畜肉・野菜を含む60種類以上もの食材に対しても適応できます。本検査法は3つの技術開発のスキームすなわち(1)新規前培養培地開発(2)効率的な核酸抽出法開発(3)複数食中毒菌の遺伝子多重検出系の開発より成り、この3つのスキームが特許性に関わる重要な部分となっています。

Outcome成果

国内特許「微生物の多重検出方法」(特許第4621919号) 、米国特許”Method of Multiplex Microorganism Detection”(U.S. Patent No. 8,298,758) を取得しています。現在、EUにおいての特許成立を目指しています。開発した技術は、キット化により実用化と普及が行われています。新規前培養培地と核酸抽出試薬はプリマハム(株)、遺伝子多重検出試薬はTakaraから、食中毒菌迅速多重検出キット「TA10(たじゅう)」シリーズとの名称で販売されるに至りました。本研究で開発された検査法は(1)新規前培養培地開発(2)効率的な核酸抽出法開発(3)複数食中毒菌の遺伝子多重検出系の開発、の3つの技術開発の集合で成り立っていますが、個別での活用も可能です。例えば将来、マイクロアレイのような技術が発展して、遺伝子を網羅的かつ極めて高感度に検出できる技術が出現した場合でも、食品からの前培養培地や核酸抽出といった技術はそのまま転用できる可能性があります。新しく開発されてくる技術をどのように取り込んでいくかが、研究と技術移転の方向を決めるカギとなります。